LightningとThunderboltて稲妻と落雷で似てるけどPC用語になると雲泥の差
- 経緯
- 買ったThunderbolt 3 SSD
- 使用するPC
- 早速分解
- FireCuda 530 2TBを載せてみた
- 認識しない原因を探る
- SSDを調達しなおす
- 気を取り直してリメイクしてみる
- それなり速いThunderbolt SSDが完成
- 総評
- 【余談】なぜGen4 SSDを調達したのか
経緯
Thunderbolt対応PCを拘って買ってる割にはThunderbolt周辺機器が無いなーとか余計なこと考えた。
前々からThunderboltなSSDには興味はあったのですが、USB 10Gbpsのエンクロージャが2000円あれば買えるのにThunderbolt 3なエンクロージャは1万円とか平気で超えてくるのでコスパ悪いと感じて渋ってたんですよね。
今回たまたま15000円くらいで容量は1TBでThunderbolt 3なSSDを見つけ、ちょいと下調べしてなんかビビッと来たので買いましたはい。
買ったThunderbolt 3 SSD
結構ゴツいです。あとデカい。だいたい6.1インチiPhoneの厚さを1.5倍増したくらいの大きさ。
HP SSD P800 1TB
HPが販売しているThunderbolt 3なSSDです。
これ買った理由その①
ズバリ、価格です。
この記事のタイトルで察しがついている方もいるかもしれませんが、筆者はThunderbolt 3 SSDのケースが欲しいのであって、中身はぶっちゃけどうでも良いのです。とはいえ値段が安ければ中身が付いてきても別に文句は言いません。今Gen3 SSD単品1TBは8000円くらいで買えるので、ケース代は約7000円と考えればまあ悪く無いでしょう。
マケプレだったけど出荷はAmazon倉庫だったので買いました。
これ買った理由その②
HPだから。
筆者が個人的にHPを信用しているという点が大きいです。Thunderbolt 3自体は認定を受ける必要があるため、Thunderbolt 3認定を謳っている製品はある程度の品質は担保されます。しかしどこの馬の骨とも知れないメーカーやブランドにお金を払う気が起きるか、というのは別問題です。HPはそこそこデカい企業ということもありますし、自社製品のThunderbolt採用に割と積極的なのと、この辺の規格に対して割と堅実なイメージが個人的にあります。
そもそも認定取ってない自称Thunderboltは論外です。
これ買った理由その③
スペック。
実はThunderbolt 3な外付けSSDには少し速いタイプと速いタイプの2種類あります。これはPCIe 3.0 x2までに対応しているJHL6240と、PCIe 3.0 x4に対応しているJHL6340という2つのThunderbolt 3コントローラが流通しているためです。前者を採用しているエンクロージャだと16Gb/sに制限されるので、だいたい2000MB/sくらいしか出ません。これだと勿体無いのでJHL6340搭載を狙い撃ちしたかった。
HP P800について調べたところ根本的な流通数が少ないこともあってか、コントローラの情報は公式非公式共に出てこなかった。ただ公式のマニュアルとかスペックを調べてみると最大読み込み速度が2400MB/sとなっているので、PCIe 3.0 x2の16Gb/sより微妙に速いんですよね。これはPCIe 3.0 x4つまりJHL6340だろうと踏んで買ったわけです。
使用するPC
R/W速度の検証とか互換性チェックとかで、もちろんPCを使います。
Spectre x360 14-eu
Intel Core Ultra 7 155H
Intel Arc Graphics
LPDDR5x-7467 32GB
KIOXIA KXG80ZNV1T02
XG8はDRAM付きなGen4 SSDで、比較的優秀なSSDです。
MacBook Pro 2023 14-inch
M2 Pro
10コアCPU
16コアGPU
LPDDR5 16GB
APPLE SSD AP0512Z
Spectre x360のXG8にも言えることですが、ブートドライブを測定しているため、SSD自体の実力はもう少し高いと思います。どちらもThunderbolt 3 SSDでボトルネックになることはないでしょう。
特筆なければ、どちらも本体右側面のThunderbolt 4 / USB4ポートを使用しています。
早速分解
保証切れても知りません、自己責任です。
ところでこの製品、3年保証がついているようです。かなり自信がある様子、耐久性に期待して筆者は即分解します。
手間はかなり少ない
ゴッツい見た目に反して実はネジ2本外すだけでSSDとご対面できる親切設計です。
ネジはケーブルの収納部分に隠れています。クセがあるとすれば星型T6ドライバーが必要なことくらい。
内部構造
外装天板が丸々ヒートシンクの役割をしているようです。
なんか封印シール変な位置に貼ってあるんだけどこれ意味あるのかな。
M.2 2280なNVMe SSDが挿さっていて物理的に換装可能です。実は基板にNANDが直で付いてたらどうしようとか少し考えてた、世の中には直接Micro-B 3.0が生えてる2.5インチHDDとかがあるので。
何だったらThunderbolt 3ケーブルすら交換できそうです。購入前に少しレビューを読んだところこのケーブルが短すぎて不評、実際短すぎて扱いにくいので交換してみても面白そうですね。
封印シール壊さないで全部バラせた件。ついでなので基板も外して裏面を見たところJHL6340が載っていることを確認できました。
格安高速TBT3 SSDへの道が見えてきました、激アツです。
元から載っていたSSD
SSD P800の売り文句に「DRAM搭載 TLC」というものがあったのでこの辺の答え合わせも含めて。
多分これHP EX920ですね。HP刻印のコントローラはSilicon Motion製のSM2262、Nanya NT5CC256M16EP-EK (DDR3L-1866 512MB) 2枚、Micron製64層3D NAND 4枚という両面実装構成のようです。
ベンチ直後に温度をCDIで読んだ限りだと、割と発熱します。
コントローラを直に触ってやけどしてふと気付いたんですが、なんかADATAのSSDに似てるような気がしますね、ADATA SX8200 Proのコントローラでやけどしたことがあるので思い出しました。
SSD自体の名称が "HP Portable SSD P800 1TB" になってしまっているようです。
性能的にはまあ普通ですね。EX920やP800自体がそれほど新しい製品ではなく、当時のGen3 SSDならまあ優秀という部類でしょう。ReadはThunderbolt 3の上限で頭打ちになっているようですが、Writeは1800MB/sと微妙なので、Thunderbolt 3の真価を発揮するにはやはりこのSSDでは力不足です。
ただ捨てるのもどうかと思うので、適当なUSB 10Gbpsなエンクロージャに突っ込んで使うことにしました。SSD自体の性能から考えても適任と言えるでしょう。
FireCuda 530 2TBを載せてみた
FireCuda 530はPCIe 4.0 x4 SSDの中でもかなり高速な部類で、Thunderbolt 3の転送速度の理論値を余裕で満たすことができます。
これはRTL9210B (USB 10Gbps) 搭載エンクロージャでベンチマークを取った結果。異様にReadが遅いのが気になるものの、WriteはほぼUSB 10Gbpsの規格上限まで到達していることがわかります。Read遅いのは、相性ということで。
元々家で使い道がなく余っていたSSDなので、これを採用しない手はありません。というかこれ載せる前提でP800調達しました。
しかし認識しない
元々載っていたSSDが両面実装であることからも分かる通り、P800は物理的に両面実装SSDに対応しています。
載せてみたものの...
厳密には5回に1回程度認識することがありましたが、ストレージとして安定的に動作しないというのは致命的なのでFireCuda 530搭載計画は早々に断念しました。
一応ベンチ取ってみた
反応したタイミングでベンチ取ってみました。
書き込みポリシーオフ。ランダムライト遅すぎ。
書き込みポリシーを有効に。なかなか速いです。
安定的に認識すれば即採用な実力なのに、もったいないですね。
認識しない原因を探る
まず、WindowsとMac両方で試したところ、どちらも同じくほとんど認識しませんでした。ただし、SSDを認識しない場合でもOS側はエンクロージャ自体を認識していました。
中のSSDを変えて試してみたところ、安定的に認識するSSDと、動作しないSSDがあることがわかりました。手持ちで
認識したSSDは
・Western Digital SN850
・TOSHIBA XG5-P
逆に認識しなかったSSDは
・KIOXIA EXCERIA G2
・KIOXIA EXCERIA PLUS
・KIOXIA EXCERIA PLUS G2
・FireCuda 530
以上の結果より筆者は "P800(のガワ)はPhison製コントローラ搭載SSDと相性が悪い" と考えました。
SSDを調達しなおす
もはや格安でThunderbolt 3 SSDを作るとか、余ってるFireCuda 530を活用するとかガン無視で企画が破綻しているのですが、こうなるとヤケなので突き進みます。
追加で以下の物を調達しました。
Western Digital SN850X 2TB
SN850がいけるならこれもいけるだろうという判断の元調達。
シリアルっぽいのは隠せって田舎のおばあちゃんから叩き込まれてるんです。嘘です。
コントローラーはWD BLACK G2、NANDは112層BiCS5 3D TLC、DDR4-3200 2048MB DRAM付き、片面実装です。実はこのコントローラーについて筆者自身よくわかってないものの、少なくともPhison製ではないと思われる。コントローラは多分SN850と同じです。
SK hynix Platinum P41 2TB
Samsungの990 PROと悩み、こちらの方が安かったので調達。
最初これ中身抜かれてるのかと思った。
超関係ないですが、裏面写真のラベル下部の文字が物凄いことになってますね。某フルーツ社製の16万円くらいするスマホのカメラです。
コントローラはAries、NANDは176層3D TLC、DRAMはLPDDR4 2048MBです。コントローラ、NAND、DRAMすべてSK hynix製です。
HP SSD P800
気に入ったのでリピ。安いですしおすし。
3年保証とはいえ初期不良だと悲しいのでまず動作確認から
初っ端から幸先悪いんですが
ベンチ完走したのでヨシとしましょう。そうそう、今まで載せ忘れてましたが、SSD載せかえてない素のP800の速度は書き込みキャッシュオンで実測↑の感じです。
テスト回数減らしてるあたりから面倒だと思ってるのが滲み出てます。
封印シールはSSDとサーマルパッドに挟まるように貼ってあって、これを破らずに分解するのは難しそうでした。1台目のはシールの位置がおかしかったようです。
Thunderbolt 3 0.7mケーブル
TREBLEETという筆者の知らないメーカーのものですが、Thunderbolt認定品ならまあ大丈夫だろうと、安いし最悪捨てれば良いだろうと、交換用ケーブルとして買ってみた。
CT-3で簡単に調べたところ、USB PD 100W対応でThunderbolt 3にも対応していることになっています。ケーブルは比較的柔らかく取り回しは悪くないですが、曲げるとミシミシと音がします。
0.7mパッシブケーブルなので、これ1本で大抵の通信はできるでしょう。
気を取り直してリメイクしてみる
今度こそ動くといいなあ
SN850Xを載せてみる
最初接続しても無反応だったので焦りましたが、冷静に考えたらこれ忘れてた。
これやらないでAmazonレビューに「動作しない」とクレーム書く人が居るとか居ないとか。
ベンチ結果は以下。書き込みポリシーはオンです。
ベンチ直後でもそれなり冷えています。
動作は安定しています。
余談、エンクロージャの名前が表示されるかと思ったら、SSD本体の名称が表示される模様。
Platinum P41を載せてみる
今回は忘れずに。
書き込みキャッシュ有効で以下。
SN850Xも、Platinum P41もPCIe 4.0 x4なSSDとしてはかなり高速な部類なので、Thunderbolt 3のPCIe 3.0 x4程度では即頭打ちです。
こちらもベンチ直後でもぬるい程度です。
筆者の手持ちでは珍しいSK hynix製、事前に互換性チェックができなかったのでやや心配でしたが、安定的に動作しています。
ケーブルを交換してみる (未遂)
P800のケーブルは短すぎるので交換しよう...と思ったら持ち手部分が長すぎて、本体に入らなかったので交換できませんでした。
Thunderbolt 3ケーブル余っちゃいましたどうしよう。
右が元々P800で使われていたケーブル、左が今回調達したケーブル。微妙にロゴがおかしい気が…
交換しても通信はできていたので、交換してみたい方は持ち手部分がコンパクトなケーブルを探すと良いでしょう。
Macに接続してみる
Thunderbolt 3で接続されています。
SN850Xに載せかえたP800でテスト。
テスト回数減らした結果、Writeの調子が出なかった回。SN850で試したときは2600MB/sまで出てたので、たまたま調子悪かっただけだと思われます。試行回数、大事。
ベンチマークはとっていませんが、MacとP41の組み合わせでも問題なく動作していました。
iPad Proに接続してみる
iPad Pro 11インチ (第4世代) のUSB-CポートはThunderbolt 3 / USB4に対応しています。本体のUSB-Cポートに接続します。
わかりやすい写真が撮れないので特にスクショ等はありませんが、認識してR/Wどちらも問題なくできることが確認できました。
iPad Pro側のPCIeトンネリングが16Gb/sなのか32Gb/sなのかは不明です。が、おそらくiPad自体の制約が大きくて根本的にそこまで速度は出ないのではないかと思っています。今回iPadでの速度の測定はしていません。
iPhoneに接続してみる
iPhone 15 ProのUSB-CポートはUSB3 (USB 10Gbps) に対応しています。
iPhoneはThunderbolt非対応のため認識しませんでした。ただしThunderboltアクセサリだということはiPhone側からわかるようで、非対応である理由までしっかり教えてくれました。Thunderbolt SSDはUSB3との下位互換製がないため、Thunderbolt 3に対応したデバイスでないと使用できません。
ハブ経由で接続してみる
Thunderbolt 4の良いところは、ドック等を用いてハブ機能を使うことができることができるところです。
Spectre x360 14-euのThunderbolt 4端子にTB4D110-MSJというThunderbolt 4ドックを接続し、ドック側のThunderboltポートにP800 (中身はP41) を接続しベンチマークをとってみます。
ケース側はThunderbolt 3ですが、特に問題はないはずです。
PC本体のThunderboltポートに直接接続したときよりもやや速度が落ちているものの、ほぼ測定誤差に収まる程度の性能低下です。動作も安定しており、問題なく使用できそうです。
それなり速いThunderbolt SSDが完成
いろいろな条件でも安定動作が確認できたところで、リメイク終了です。
HP SSD P800のガワと、1台はSN850X、もう1台はPlatinum P41の組み合わせで今後使っていくことにします。
統計が少なすぎるため断定はできませんが、もしHP SSD P800を犠牲にしてThunderbolt SSDをリメイクしたい方がいる場合、Phison製コントローラを採用したSSDはあまりお勧めできません。代表的な製品だとKIOXIAのEXCERIAシリーズ (PROシリーズやPLUSシリーズも含む) やSeagateのFireCudaシリーズはPhison製コントローラーを採用している事例が多いため注意が必要です。特にKIOXIAの場合はコントローラ上の刻印が "KIOXIA" になっているものの、実際はPhison製というパターンがあるため見た目だけで判断するとやられる可能性があります。
総評
リメイクしていて途中から感じていました、"本当にコスパ良いのか?"
先述の通りSSD P800はThunderbolt 3であるため、Thunderbolt 3に対応したPCやiPadでないと使用できないという制約があります。そのため、使用できる環境が自動的に限定されます。
また "15000円のSSDはそもそも安いのか?" という疑問が湧いてきました。冷静に考えれば元々は拠り所のないFireCudaを使用する前提であったため、そこまで投資する気ではいませんでした。最終的に今回のSSD増強は約7万円出資している訳ですが、せいぜいUSB 10Gbpsの3倍の速度のSSDを求めて出す金額か?と問われると少し割に合わない気もします。
しかし、そんなことはどうでも良いのです。筆者のPC環境はWin/MacともにThunderbolt対応ですし、Thunderbolt SSDはかねてより興味があったので、それを弄れた満足感が大きいですね。実用性も悪くないです。Win/MacプラスアルファiPadでも高速で転送できる外付けSSDというのはなかなか夢があります。SSDだけで物理的にiPhoneよりデカいのは気になります。
P800 2台から剥がした1TB SSDが2枚の2TB、SN850XとP41のそれぞれ2TBで合計6TB分外部ストレージが増強された訳ですが、どうしましょうかね。
【余談】なぜGen4 SSDを調達したのか
Thunderbolt 3 (PCIe 3.0 x4) であるP800に載せる用のSSDに、なぜオーバースペックなPCIe 4.0 x4なSSDを調達したのかというお話。
筆者は今回SSDを調達するにあたって、Gen4は条件にしていません。今回のSSD探しの具体的な条件を開示しますと
- 大手メーカー製であること (Samsung, WD, SK hynix, Micron, KIOXIA)
- Phison製コントローラを採用した製品でないこと
- Read/Write共に最高3000MB/s以上出ること
- 容量が2TB以上であること
- DRAMを搭載していること
- TLC NANDを採用していること
- M.2 2280 NVMe SSDであること
以上の7つを条件に探していました。実はこの条件にマッチするGen3 SSDはかなり少なく、Samsung 970 EVO PlusかSK hynix Gold P31くらいです。調べてもらうとわかりやすいのですが、これらの製品は生産終了なのか流通数が極めて少なくなっています。
上記の条件を満たすSSDを探すと、Gen4 SSDしか選択肢が無くなってくる訳です。つまり、Gen4を狙い撃ちしたのではなく、選択肢が無いので仕方なくGen4 SSDを選んだというのが答えです。
あと、国内だと価格が割安なKIOXIAが総じてPhison製コントローラを採用しているため、今回チョイスできなかったのがなかなか痛かったですね。
FireCuda 530も元から家にあった余りものというだけで、Gen4に拘ったわけではありません。もし家に970 EVO Plusとか、Gold P31とかあったのであれば、それでも良かった。
ゴチャゴチャ書きましたが「Gen3 SSDでも良かったが、条件に合うSSDがGen4しかなかったから選んだ」が答えです。とはいえ、Gen4の価格が落ちてきて、Gen3とGen4の価格差が小さくなってきているので、まあ良いかな。